2025.9.29

目視検査だけでは限界──その課題、AIが解決できるかもしれません。
人手不足や検査品質のばらつきに悩む製造現場では、画像認識AIを活用した外観検査の自動化が大きな注目を集めています。
松本電気では、AI導入前のPoC(概念実証)から運用支援までを一貫してサポートし、検査精度の安定化や人件費削減といった成果を実現しています。
本記事では、外観検査AIの導入で得られる具体的なメリットや導入の進め方、成功事例をご紹介。品質管理にお悩みの企業様に、次の一手をご提案します。

1. 深刻化する人手不足と品質保証の壁──いま現場で起きていること
製造業では今、少子高齢化による人手不足が深刻さを増しています。
特に製品の最終品質を担保する「検査工程」では、熟練者の引退や後継不足が進み、品質維持すら危うい現場も少なくありません。
従来の目視検査には、どうしてもヒューマンエラーや判断のばらつきといった限界があります。特に、微細な欠陥やスピードの速いラインでは、見落としのリスクが避けられず、リコールやブランド毀損につながるケースも。
こうした課題に対し、松本電気は省人化設備の導入支援を通じて、品質のバラつきや人手不足といった問題を根本から解決してきました。
現場の環境や検査対象に合わせた丁寧な提案と、導入後の運用支援までワンストップで対応。確かな現場知見に基づくサポートが、多くの製造現場から選ばれる理由です。
2. 不良品検出AIシステムとは?
品質管理を次のレベルへ引き上げる革新技術
不良品検出AIシステムとは、製品や部品の傷・汚れ・異物・変形などをAIが自動で検出し、良品と不良品を判定する仕組みです。人手に頼っていた外観検査を、精度・スピード・安定性すべてにおいて大きく進化させることができます。
2.1 外観検査を根本から変えるAIの仕組み
このシステムでは、製造ライン上のカメラで撮影した製品画像をAIが分析。事前に学習させた良品・不良品データと照合し、微細なキズや異常も瞬時に検出します。
従来の目視やルールベースの検査と比べ、AIは以下のような点で優位性を持ちます。
比較項目 |
目視検査 |
ルールベース検査 |
AI外観検査 |
検出精度 |
人に依存し、ばらつきあり |
ルール外は検出不可 |
学習により高精度検出 |
安定性 |
検査員の体調や熟練度に左右される |
一定だが柔軟性に欠ける |
常に一定基準で判定 |
対応力 |
不良パターンの変化に弱い |
設定変更が必要 |
学習で柔軟に対応可能 |
2.2 ディープラーニングによる高精度な判定
不良品検出AIの心臓部は「ディープラーニング(深層学習)」です。
人間の脳に似た仕組みを持つAIが、大量の画像から良品と不良品の違いを自動で学習。
熟練者でも見逃すような微細な傷や色むら、形状のゆがみも高精度に見分けることができます。
学習には以下の2つのアプローチがあります:
- 教師あり学習:良品・不良品の画像にラベルを付け、正確な分類を目指す
- 教師なし学習:良品データのみを学習し、そこから逸脱する異常を検出
どちらの方法も、検査精度を継続的に高めることができ、検出レベルの向上とともに、不良品の流出リスクを限りなくゼロに近づけます。
3. 不良品検出AIシステムがもたらす変革
人手不足対策から品質向上・コスト削減まで広がる導入効果
3.1 深刻な人手不足を乗り越える「省人化」の力
製造業では、検査工程を担う人材の確保がますます困難になっています。
AIによる不良品検出は、そうした現場の課題を根本から解決します。
AIが目視検査を代替することで、熟練検査員に依存せず、限られた人材をより付加価値の高い業務に配置可能に。
3.2 検査精度のバラつきをなくし、品質を安定化
AIは学習データに基づいて、常に同じ基準で製品を判定します。
人間では見逃しがちな微細な傷や異常も、高精度で検出。
しかも、24時間体制でも品質が安定しており、ヒューマンエラーのリスクも大幅に低減します。
結果として、不良品の流出を防ぎ、取引先からの信頼を高めることにもつながります。
3.3 生産性向上とコスト最適化を同時に実現
AI検査の導入は、次のような経営効果ももたらします:
- 人件費削減:過剰な人員配置を抑え、適正運用が可能に
- 不良品削減:早期検出により手戻りや廃棄コストを抑制
- 検査時間短縮:高速処理でサイクルタイムを短縮
- 生産スループット向上:検査工程のボトルネックを解消
- 保証コストの最適化:リコールやクレーム対応の削減
こうした多面的な改善は、企業全体の収益性と信頼性の向上につながります。
4. 導入を成功させるためのステップ
不良品検出AIの導入を成功させるには、現場課題に即した段階的なアプローチがカギを握ります。
この章では具体的な導入のステップについて解説いたします。
4.1 課題とゴールを明確にする
不良品検出AIの導入では、まず「何に困っていて、何を実現したいのか」を明確にすることが出発点です。
たとえば「目視検査のバラつきが気になる」「人員不足で品質維持が難しい」などの課題を洗い出し、「不良流出ゼロ」「人件費○%削減」など具体的なKPIに落とし込むことが、ベンダー選定や導入設計をスムーズにします。
松本電気では、現場ヒアリングを重ねながら省人化設備導入に必要な課題整理と要件定義を一緒に行う伴走支援を提供しています。
4.2 データ準備が成功の9割
AIの性能は、学習させるデータの質と量に大きく依存します。
良品・不良品の画像データを収集し、不良箇所にタグをつける「アノテーション」作業が不可欠です。
松本電気では、既存データの活用提案やアノテーション支援も可能。データ不足時には合成画像の提案や拡張手法の検討も行います。
4.3 小さく試して、大きく育てる(PoCから本格展開へ)
いきなり大規模導入するのではなく、まずはPoC(概念実証)で効果を検証しましょう。
小規模なラインにAI検査を導入し、精度・スピード・連携性を確認。課題があれば改善を重ねて、次のステップへ進みます。
導入フェーズ |
内容 |
成功のポイント |
計画・準備 |
課題の明確化・要件定義 |
目的とKPIを設定し共有 |
PoC |
小規模導入・効果検証 |
実際の現場データで柔軟に検証 |
パイロット導入 |
一部ラインでの本稼働 |
オペレーターとの連携を強化 |
全社展開 |
全ラインへ展開、継続的改善 |
モデル再学習と体制整備の継続 |
5. 不良品検出AIシステムの導入事例
実際に導入された現場では、不良品検出AIシステムが検査工程の効率化や品質改善に大きく貢献しています。ここでは3つの代表的なケースをご紹介します。
5.1 食品工場|異物混入リスクをAIで抑止
ある食品メーカーでは、髪の毛や小さな異物を見逃すリスクに悩まされていました。AI導入により、高速ラインでも微細な異物を安定検出。夜間や長時間稼働時のヒューマンエラーが激減し、食品の安全性と生産効率が向上しました。
5.2 自動車部品製造|微細な傷や打痕を高精度で検出
自動車部品の外観検査にAIを導入した事例では、従来の目視では見逃されがちな細かな傷や塗装ムラを高精度で自動検出。検査精度99%以上を維持しつつ、人員を30%削減することに成功しました。
5.3 電子部品製造|極小欠陥の自動検出で品質向上
プリント基板などの電子部品におけるはんだ不良検出にもAIが活躍。AIはディープラーニングを通じて、ブリッジ・ショートなどの微細な不良を自動識別します。導入により誤判定が減少し、検査スピードと最終製品の品質が大幅に改善されました。
6. 品質保証の未来を支えるAIシステムとは
不良品検出AIは、単なる「検査工程の自動化」にとどまらず、スマートファクトリーや予知保全といった先進領域でも活用が進んでいます。
6.1 スマートファクトリー中核としての役割
AIが検出した不良データは、生産管理システム(MES)と連携し、異常検知や自動調整をリアルタイムで実行。繰り返し発生する不良パターンを学習することで、上流工程の装置設定を自動で最適化する仕組みも実現可能です。
6.2 予知保全による新たな価値の創出
AIによる検査データの蓄積は、設備の摩耗や異常傾向を早期に察知する「予知保全」にも活用されます。これにより、突発的な故障を防ぎ、計画的なメンテナンスが可能に。
予知保全で得られる主なメリット:
- ダウンタイム削減:異常を予測し、ライン停止を未然に防止
- メンテナンスコスト削減:不要な点検や部品交換を回避
- 品質安定化:装置劣化による不良発生を抑制
- 製品改善への応用:蓄積データが設計・開発に貢献
7. まとめ|品質保証を進化させる不良品検出AI
不良品検出AIは、目視検査の限界を超え、製造現場に新たな可能性をもたらします。高精度かつ安定した検査を実現しながら、人手不足やコストの課題を解消。省人化・品質向上・生産性アップを同時に叶える革新的な選択肢です。
さらに、スマートファクトリーや予知保全との連携により、AIは単なる検査ツールから“未来の品質保証基盤”へと進化しています。
AIを活用した不良品検知、松本電気でも対応可能?
松本電気では、画像処理や電気制御に関する豊富な実績があり、AIを活用した検査システムの導入支援もご相談いただけます。
ただし、検査対象や撮像環境などにより、最適な構成や精度は異なります。
▶︎ AI検知システムの導入を検討中の方は、お気軽にお問い合わせください。
現場の状況やご要望をヒアリングし、実現可能なソリューションをご提案いたします。
