2025.6.25
電気代が高くなった今、「古い設備をそろそろ更新したい」「省エネ対策を進めたい」と考える企業が増えています。
しかし、いざ見積を取ってみると、初期費用の高さに二の足を踏んでしまうことも──。
本記事では、設備投資で「損しないため」に知っておくべき補助金の基礎知識から、
実際に補助金を活用して成功した企業事例、採択率を上げるための申請のコツ、注意点までを網羅的に解説します。

電気料金が高騰する今、補助金活用が企業を救う

「電気代がここ数年で倍近くになった」「設備が古いのは分かっているけど、更新する余裕がない」──
そんな声が、製造業・サービス業を問わず多くの現場から聞こえてきます。
とくに高圧電力や業務用設備を使う企業にとって、エネルギーコストの増加は利益を圧迫する深刻な経営課題です。
だからこそ今、省エネ設備への投資と、それを支える補助金の活用が急務になっています。
国や自治体は、省エネ・再エネ・省力化を進める企業を支援するために、さまざまな補助金制度を整備しています。
要件に合致すれば、LED照明の更新、業務用空調の入れ替え、太陽光・蓄電池の設置といった電気工事を伴う設備投資費用の一部〜半額以上が補助されるケースもあります。
この章では、なぜ「今」こそ補助金の活用が重要なのか、3つの理由からわかりやすく解説していきます。
電気工事の設備投資で補助金活用が重要な3つの理由

電気工事に補助金を活用すべき理由は、単なる「コスト削減」にとどまりません。
電気料金の高騰・社会的評価・経営体力の確保といった経営全体に関わる要素に直結しています。
ここでは、今こそ補助金を活用すべき3つの背景について整理します。
① 電気料金の高騰が止まらない
- 燃料費調整額や再エネ賦課金の増加で、企業の電気代は年々上昇中
- とくに照明・空調・生産設備を多く使う業種では、経営を圧迫するレベルに
- 補助金を活用した省エネ設備の導入で、継続的な電気代削減が可能に
② 設備投資へのコスト負担を大幅に軽減できる
- 補助率は制度によって最大2/3もあり、導入ハードルが一気に下がる
- 自己資金が限られていても、資金繰りを圧迫せずに最新設備を導入できる
- 投資回収期間が短縮され、キャッシュフローの改善にもつながる
③ ESG・SDGsなど社会的評価の時代に対応
- 省エネや再エネ投資は、環境意識の高い企業としての信頼性向上に直結
- 顧客や取引先、金融機関からの印象や調達条件にも良い影響を与える
- 「SDGs経営」「ESG対応」の文脈で、将来的な成長投資としても価値がある
電気工事の設備投資に使える主な補助金制度一覧

電気工事を伴う設備投資で活用できる補助金制度は、国・自治体あわせて多数あります。
ただし、それぞれ目的や対象設備、補助率などに違いがあるため、自社の投資内容や事業計画に適した制度を選ぶことがカギです。
ここでは、代表的な5つの補助金制度の概要を一覧で整理しました。
補助金制度 |
対象となる主な電気工事・設備 |
特徴・ポイント |
補助率・補助額(目安) |
事業再構築補助金 |
新規事業に伴う電気設備工事/BCP対応の電源設備など |
事業転換や業態再編を支援/再エネ導入にも対応 |
最大2/3、上限最大1.5億円(枠により異なる) |
ものづくり補助金 |
IoT化・自動化設備/それに伴う電源工事・制御盤設置など |
中小企業の生産性向上を目的とした補助金/設備導入と一体で工事も対象 |
1/2〜2/3、上限最大1,250万円程度 |
省エネ補助金(SII) |
LED照明/高効率空調/キュービクルなどの省エネ設備導入 |
省エネ効果を数値で示す必要あり/複数区分に分かれている |
1/3〜1/2、上限数百万円〜案件による |
省力化補助金 |
ロボット/自動搬送機器等+電源・制御工事など |
指定カタログ製品が対象/中小企業の人手不足対策向け |
1/2(小規模なら2/3)、上限150万円程度 |
地方自治体の補助金 |
LED・空調・太陽光発電などの導入や更新工事 |
国補助との併用可な制度もあり/補助率や対象設備は地域によって異なる |
補助率1/2前後が多い/上限数十〜数百万円 |
それぞれの補助金制度には、対象となる事業規模や要件、審査の視点が異なります。
補助金を選ぶ際は「自社の計画に合うか」「審査で何が重視されるか」を見極め、早めに準備を始めることが成功のポイントです。
次の章では、これらの補助金で対象になりやすい「具体的な電気工事・設備投資例」を紹介します。
どんな工事が補助対象になるのか、イメージを持ってもらえるはずです。
補助金対象になりやすい電気工事の種類と設備投資例
電気工事を伴う設備投資のなかでも、補助金の対象になりやすい設備には一定の傾向があります。
省エネ効果が高く、定量的な効果を示しやすい設備は、採択率が高くなる傾向にあります。
この章では、代表的な対象設備をピックアップし、それぞれの特徴と補助金活用のポイントを整理してご紹介します。
LED照明への交換
照明設備は、電力使用量の多い施設にとって大きなコスト要因です。蛍光灯や水銀灯からLEDへの交換は、電気代の大幅な削減とメンテナンス頻度の低下につながる定番の省エネ対策です。
また、比較的導入コストも抑えられるため、初めての補助金活用にも適しています。
主な効果
- 電気代を最大60〜80%削減
- 長寿命で交換頻度・人件費も削減
- 明るさや光の質が向上し、作業環境も快適に
補助金活用ポイント
- 補助対象機器(認定LED製品)であることが必須
- 現在の使用電力量との比較数値を示す
- 工場・店舗・事務所など多様な施設で対応可能
高効率空調(業務用エアコン)
空調設備は、事業所のエネルギー消費の中でも非常に大きな割合を占めます。旧式のエアコンから高効率なビル用マルチエアコンやガスヒートポンプ(GHP)へ更新することで、大きな省エネ効果と快適性向上が見込めます。
主な効果
- 電気料金の削減(特に夏冬のピーク対策に有効)
- 快適な室内環境の実現で従業員の集中力や満足度向上
- 環境負荷の低減(冷媒やエネルギー効率の改善)
補助金活用ポイント
- APF(通年エネルギー消費効率)基準を満たす製品が対象
- 対象製品リストや証明書類が必要になることが多い
- 工事の規模が大きくなりやすいため、早めの計画が重要
キュービクル(受変電設備)の更新
高圧電力を施設内で使用可能な低圧電力に変換するキュービクルは、工場や大規模施設に不可欠な電気設備です。老朽化した設備を更新することで、電力ロスの低減や安全性の向上が図れます。
主な効果
- 変換効率の向上により電力ロスを削減
- 経年劣化による故障リスクの軽減
- 安全基準の最新化による保安力向上
補助金活用ポイント
- トップランナー変圧器など高効率モデルが対象
- 「更新前後の比較」や「法令準拠工事」であることが要件になることも
- 工期や施工制限がある場合はスケジュール調整が重要
太陽光発電+蓄電池の導入
再生可能エネルギーの代表である太陽光発電と、それを最大限活用するための蓄電池は、補助金対象として注目度の高い設備です。特に、電力の自家消費や非常時の電源確保といったBCP対策にも有効です。
主な効果
- 電気料金の削減(自家発電・ピークカット)
- 災害時の電力確保(停電対策・BCP強化)
- CO2削減による企業価値の向上
補助金活用ポイント
- 「自家消費型」であること(売電を目的としない)
- 自家消費率や系統連系の条件など、制度ごとに技術要件あり
- 設計段階から蓄電池・EMS(エネルギー管理)も含めた計画が求められる
このように、電気工事を伴う設備のなかでも、省エネ効果が高く汎用性のある設備は補助金対象となりやすく、導入のハードルを大きく下げることができます。
次の章では、実際にこれらの設備で補助金を活用した企業の成功事例を紹介します。
補助金活用に成功した企業の事例

実際に補助金を活用して電気工事の設備投資を行った企業では、電気代の削減だけでなく、従業員満足度の向上やBCP対策の強化など、副次的な効果も得られています。
この章では、3つの企業事例を紹介し、どのような設備を導入し、どんな成果が得られたのかを分かりやすく整理します。
企業(業種) |
導入した主な設備 |
活用した補助金 |
導入効果 |
A社(製造業) |
LED照明、キュービクル更新 |
省エネルギー投資促進支援事業費補助金 |
電気代を約25%削減、作業環境も明るく改善、CO2削減で企業イメージ向上 |
B社(商業施設) |
太陽光発電、蓄電池システム |
事業再構築補助金(グリーン成長枠) |
買電量を年間30%削減、BCP対策を強化、環境配慮型店舗として集客効果も |
C社(オフィス) |
LED照明、高効率空調 |
自治体の省エネ補助金 |
電気代を年間約15%削減、オフィスの快適性アップ、従業員の満足度向上 |
これらの企業に共通するのは、「課題を明確にし、補助金の目的に合致した計画を立てた」ことです。
また、補助金制度の仕組みや審査ポイントを理解し、信頼できる施工業者・専門家と連携して進めた点も成功要因のひとつです。
次の章では、こうした成功につなげるために欠かせない「補助金申請のコツと注意点」を詳しく解説していきます。
電気工事の補助金申請における採択率を上げるための3ステップ
補助金申請は、単に「対象設備を導入したい」と伝えるだけでは不十分です。
審査に通過するためには、制度の趣旨を正しく理解し、自社の課題と整合性のある計画を立て、説得力のある申請書を仕上げることが重要です。
ここでは、採択率を高めるための基本的な3ステップを紹介します。
ステップ1:補助金の趣旨を理解し、自社の課題に結びつける
補助金にはそれぞれ、政策的な目的(例:省エネルギー化、地域振興、BCP強化など)が明確に定められています。
自社の課題が、その目的にどう結びつくのかを明確にすることが第一歩です。
ポイント
- 公募要領を読み込み、審査基準や目的を把握する
- 省エネ補助金なら「どれだけ電力量が下がるか」、再構築補助金なら「どう新規事業に繋がるか」を論理的に示す
- 自社の現状と導入後の変化を定量的に表現(電気代、CO2排出量、作業時間など)
ステップ2:加点要素を積極的に盛り込む
多くの補助金制度では、採点方式が採用されており、一定の条件を満たすと加点される仕組みになっています。
要件に合致する取り組みを行っている場合は、忘れずにアピールしましょう。
主な加点項目の例
- 経営革新計画の認定を受けている
- パートナーシップ構築宣言を公表済み
- **BCP(事業継続力強化計画)**の策定・認定を受けている
- 従業員の賃上げ表明をしている
- SDGsや環境対策への貢献が明確になっている
※これらは補助金によって適用有無が異なるため、公募要領で要確認
ステップ3:施工業者・専門家と連携して申請精度を高める
補助金申請には、設備の仕様書、見積書、施工計画など、専門的な資料の提出が求められます。
経験のある電気工事業者や中小企業診断士と連携することで、申請の信頼性や完成度が一段と高まります。
連携先の例
- 補助金実績のある施工業者(過去の申請事例を把握している)
- 中小企業診断士や認定支援機関(事業計画の構成・添削に強い)
- 行政書士や補助金専門コンサルタント(提出書類の精度を担保)
補足
- 申請を丸投げするのではなく、自社の課題と導入目的は自分の言葉で語れるようにしておくことが大切です。
- 審査員は「この企業が本気で取り組むか」を見ています。熱意と実現可能性の両立が鍵です。
このように、補助金の採択率を上げるには、「戦略性」「整合性」「説得力」の3つがそろっていることが重要です。
次の章では、こうした申請時に陥りやすい失敗や注意点について、チェックリスト形式で整理していきます。
電気工事の設備投資での補助金申請における注意点と対策

補助金は、うまく活用すれば大きなメリットがありますが、申請ミスや認識のズレによって「不採択」や「交付取り消し」につながるリスクもある制度です。
ここでは、実際の現場でよくある注意点と、それに対する具体的な対策を整理します。
1. 申請期限に間に合わない・準備不足で間に合わない
例:
- 気づいたときには締切まであと数日。GビズIDの取得も間に合わない
- 業者の見積や設備仕様書が揃わず、書類の提出が遅延
対策:
- 定期的に国・自治体の補助金情報をチェックし、早めに準備を開始
- GビズID(電子申請用アカウント)は事前に取得しておく
- 見積や設計図など、外部依頼が必要な資料は最優先で依頼
2. 補助対象外の経費を誤って申請する
例:
- 汎用的な備品(パソコン、机など)を経費に含めてしまった
- 工事のうち、一部しか補助対象でない作業を全体に含めた
対策:
- 公募要領を熟読し、「対象経費」「対象外経費」を確認
- 経費は設備・設置工事・周辺機器までを明確に区別して記載
- 不明点は事務局に事前照会するのが確実
3. 採択後の事業実施・報告が煩雑
例:
- 設備の導入スケジュールがずれて、事業期間内に完了できない
- 実績報告に必要な書類(請求書・振込控・納品書など)が不足
対策:
- 事業期間(例:交付決定日~完了報告日)を厳守するスケジュールを組む
- 支払や検収時に必要な書類を「抜けなく、順序どおり」保管
- 報告内容と事前計画にずれが出た場合は、速やかに事務局へ相談
4. 交付後の監査・検査に対応できない
例:
- 補助金で導入した設備の使用記録が残っていない
- 交付から数年後の検査に書類を用意できず、返還を求められた
対策:
- 設備の利用記録・写真・報告書は5年間以上保管する
- 取得財産(補助で購入した設備)の転用や売却はルールに従う
- 監査の可能性を想定し、帳簿や証拠書類は整理しておく
5. 不採択となった場合の備えがない
例:
- 不採択後に予算も計画も白紙に
- 再申請のチャンスを逃してしまう
対策:
- 不採択でも理由を確認し、事業計画を見直して次回に備える
- 他の補助金制度(地方自治体や別枠)も視野に入れる
- 自己資金+補助金を前提にしない予算設計を組んでおく
補助金の申請は、事前準備・制度理解・計画管理がそろってこそ実現できます。
「もらえたらラッキー」ではなく、実現性ある事業の一部として組み込む姿勢が、成功と信頼につながります。
次の章では、こうした制度を安全かつ効率的に活用するために大切な「パートナー選び」のポイントを紹介します。
まとめ

ここまで見てきたように、補助金を活用した電気工事の設備投資は、
コスト削減・省エネ推進・企業価値向上を同時に実現できる、非常に効果的な手段です。
一方で、申請には制度理解・書類準備・スケジュール管理などが求められ、
不慣れな状態で進めると「チャンスを逃す」「申請しても不採択」といったリスクもあります。
だからこそ、自社に合った補助金を見極め、信頼できるパートナーと連携して
計画的に準備を進めることが、成功への最短ルートです。
次の一歩として、まずはこの2点から始めましょう:
- 自社の課題と設備更新の目的を明確にする
「何を、なぜ導入したいのか」を言語化することがスタート地点です。
- 補助金の最新情報をキャッチアップする
制度は年度ごとに内容が変わるため、最新情報の収集が欠かせません。
「何から始めればいいかわからない」「申請に強い業者を探したい」
そんなときは、補助金活用に詳しい施工業者や認定支援機関への相談が最も効率的です。
松本電気では補助金活用のご相談も随時お受け付けています!

タイミングを逃さず、今の設備更新を“補助金で叶える”第一歩を踏み出してみてください。